2013-01-01から1年間の記事一覧

振り返る

昨年も一昨年も、大晦日の午前中まで仕事だったせいで、ろくに一年を振り返ることができないまま、新年を迎えた。今年は正月休みが一日少ない代わりに、大晦日にこうして休みをいただいたので、一年を振り返りたいと思う。 2年間勤めた場所を異動することに…

読書記録2013

本当に瀬戸際に立って迎える年の瀬。今年も恒例、2013年の読書記録をここにまとめたい。読んだ本を並べることは、その時々の思いを綴るより、克明にその年を物語るような気がする。読んだ本が人生を創る。そんな思いの中、忙しいながらも充実した読書生活を…

あとがき

前の記事、「月面のフード」のあとがきではないことを、先に断っておきます。 就職してから初めて、きちんとゼロから小説を書き上げた。 執筆期間はちょうど1週間。これまでひたすら読書はしてきたものの、アウトプットした言葉をまとまった作品にすること…

【小説】月面のフード

「月へ行ってみたいとは思いませんか」 猫に話しかけられたのは生まれて初めてだった。 塾の帰り、僕はコンビニの小さな駐車場で肉まんを食べようとしていた。周りに人はいない。僕が座ろうとした車止めの上に、美しいグレーの毛並みを持った、ロシアンブル…

ここではないどこかのきらめき

ページをめくることがいとおしく感じられる読書の時間は、至福以外の何ものでもない。そんな幸せな時間を約束してくれる物語の数々を、今、味わうように、かつ、むさぼるように読んでいる。 吉田篤弘 『針がとぶ』(中公文庫) 『それからはスープのことばか…

現在地の確認

誰しも過去を振り返りながら前に進んでいくものだとは思うけれど、時が経つにつれて、頻繁に思い返していたころの記憶が薄れていくのを感じる。仕事を始めてから何度となく振り返っていた、就職が決まったときのことも、最近ではあまり考えることもなくなっ…

揺らぎのなかで

教育に携わりながら、確かな一歩を踏みしめるように三年目を迎え、曲がりなりにもここまできたことに対する自信を支えにして、整備されていなかった道を切り拓くような仕事を任され、今日も歩み続けている。 どこを目指して、何に出会うために自分が歩いてい…

日記まがい

本の感想ではない、日記らしい日記を久しく書いていないような気がして、筆を執る。ずいぶん昔から、何か書くという行為は、それがどれだけ私的な内容であっても、書いてしまった時点で他人に読まれる可能性を孕むのだという事実から逃れられない。よく、ノ…

死をもって語るその声に、静かに耳を傾けること

――あの人たちは何も語らなかっただろうか。あの人たちは本当に何も語らなかっただろうか。あの人たちはたしかに饒舌ではなかった。それはあの人たちの人柄に先ずよっていた。 佐多稲子 『樹影』(講談社文芸文庫) 引用した書き出しから、まっすぐな問いが飛…

人々は祈り、また海に出る

日々を無事に生きていきたいという思いは、自然と祈りというかたちをとって現れる。人間の力の決して及ばない場所に、特別な何かの存在を生み出して、人々は祈りをささげる。一日でも長く生きようとする思いに、善悪はあるのだろうか。 吉村昭 『破船』(新…

息切れ

自分ひとりにできることなんて限られている。とは、よく聞くのだけれど、経験を重ねていくと、できることの幅が広がって、時間さえ確保できれば何とかできるはずだと無理しようとしてしまうことが、最近多い。 任されることの多くは、自分だからこそできるこ…

秋の枯れ葉のものがたり

深まる秋、降り積もる落ち葉を踏みしだいて歩く先に、長い冬の眠りが待っている。萌えいずる春を迎えるまで、ゆっくりと目を閉じる彼ら。 荘厳な額に入れられた銅版画の物語がここにある。 山尾悠子 『ラピスラズリ』(ちくま文庫) ここではない遠い世界の…

辺境の聖域

泊りがけの遠出がしたくて、石川県に行くことにした。旅程の詳細は特に決めず、ホテルの予約も行き当たりばったりの、気楽な放浪である。昨日、兼六園と金沢城公園をゆったり観光して、今日は朝から県立美術館と21世紀美術館をめぐり、泉鏡花記念館にも行っ…

湖に降る敵討ちの雨

過去に読んだ小説で出会った彼のおかげで、雨が降っていると、ときどき死について思いをめぐらせるようになった。人間に興味はないが、担当する人間にはきちんと調査を行い、判断を下す。淡々と「仕事だからだ」と言う彼が、不思議なほど恰好よく見えてくる…

文章のゴシック建築

幻想、という言葉の響きは、いつだって言い知れぬ魅力に満ちている。けれど、魅力を感じながらも、これまではずっとそびえ立つ言葉の城を、遠目から眺めていただけだったように思う。城門はつねに開放されていたにもかかわらず、外観の美しさから、一度入っ…

さえずりにじっと耳を澄ませて

行間から聴こえてくる優しいさえずりに、耳を傾ける。澄みきった青空に響くメジロの高い歌声が、心を洗う。 小川洋子[著]『ことり』(朝日新聞出版) 昨日、京都と大阪を往復する間、ずっと読んでいた一冊。 “小鳥の小父さん”と呼ばれる男性が、ある日静かに…

雨模様の京都で

あまり雨の降らない梅雨だなと思いながら7月を迎えたけれど、京都に行く日は大体雨が降るのはどうしてなのだろう。不思議に思いつつ、でもそんなに悪くない気もしている。 新海誠監督作品の『言の葉の庭』を観たからかもしれない。雨がつないでいくひととひ…

攻撃的な縦パス

録画していたサッカー、コンフェデレーションズカップ決勝のブラジル対スペインを、ブラジルの3点目からセルヒオ・ラモスがPKを外すところまで観て消した。当然結果を知ってから観たわけだが、もともと世界トップレベルの個の力に、規律ある組織力とホーム…

上半期終了

終わっていく6月を思う。今月は、毎日の更新をどれくらい続けられるか試してみた。結構本気を出して、無理して続けようと試みたものの、やっぱり忙しくて、中盤は見ての通り何もできなかった。 物理的な仕事の量というより、翌日こなすべきことを頭の中で整…

郊外

都会に住んではいるけれど、郊外に惹かれる気持ちは強い。幼稚園から中2までを過ごした大阪市の北部が、いまだに好きな土地だからかもしれない。交通量の多い道路はあるものの、おおむね静かで住みやすいベッドタウンだった。 中3から大学卒業まで住んでい…

とりとめのない雑談

本を片手に雑談する喫茶、そんなイベントに参加してきた。 仕事外でひとと会う機会をたくさんつくる一年にしようという、その一環として。 自分の仕事のことを話して、自分のやっていることがどんなふうに見られるのかが面白かったり、会社勤めでないひとの…

欠けていく

この歳になって、ひととつながりをつくって保つことの難しさを思う。仕事外で、誰かに出会うことがなかなかできない状況にあって、仕事から離れて落ち着ける関係性を求めるのは自然な流れで、これまでの友人だけでなく、輪を広げていきたい思いも募るからこ…

定点観測

同年代のひとと出会い、話す機会が仕事上少ないため、仕事を通していろんなひとと関わって社交性が向上したように思えても、実際そうでもないことに気付かされて悲しいことがある。 大勢が集まる場で、きっと自分はこの先も、大きな輪の中には馴染めない。そ…

意味なく読まれるために

午前中から仕事が始まる日は必然的に寝不足なので、現在寝そうである。寝そうだが、今日でようやく7日間更新が続いたことになるため、何かしらを書かなければと意地になって維持を試みている。 些細な誘惑に負けて数十分時間をロスするような意志の薄弱さが…

前提を覆す

書き言葉を持たずに生きるひとの言葉は、時としてとてつもなく価値のあるものとなる。そんな気がしている。多くのひとがブログやTwitterで自分の思いを言葉にしていて、初対面のひととのコミュニケーションにはおいては、思考の流れや日常をより深く理解し合…

開かずの郵便受け

普段、あまりに郵便受けを見ない。 不要なチラシが9割以上を占め、名指しで来る重要な郵便物など滅多にないうえ、仕事の鞄が重たいので、郵便物を手に取るのが面倒に思えるというのが主な理由である。毎日見ずに、余計なDMが溜まったら捨てる、を繰り返して…

すくすくと

火曜日は仕事が最も忙しく、最も楽しい日である。 しんどいけれど、力を尽くしたぶんだけ成果が目に見えて表れる。 詳しく書きたいが、仕事のことなので書けない。 人に言いたくてたまらない喜びがまたひとつ。

岸辺から

さて、いつまで続くのか連日更新。1日から始まったので、つい意地になってペースを維持しようとしている(シャレではない)。 早く帰れるはずが思わぬ残業を余儀なくされ、1時間ほどとあるイートインスペースで、何も食べずに仕事をしていた。Surfaceがな…

ジェットストリーム

長期間の酷使で力尽きたJet Stream赤0.7の代わりにDr.Grip4色+1を使っていたのだが、どうも滑らかさに欠けると思ってJet Streamを買い直した。普段胸ポケットには前者の2本とともにDr.Grip Full Blackのシャーペンの計3本とニーモシネのメモ帳が入っている…

カフェ

6月に入りましたね。だから、というわけではないのですが、久しくブログらしいことを何も書けていなかったこともあって、ごく普通の日常を書いてみようかと、ふと思いました。 常体で書くとどうも堅苦しくなって、仕事のことを書いてしまうことが多いので、…