読書記録2013

 本当に瀬戸際に立って迎える年の瀬。今年も恒例、2013年の読書記録をここにまとめたい。読んだ本を並べることは、その時々の思いを綴るより、克明にその年を物語るような気がする。読んだ本が人生を創る。そんな思いの中、忙しいながらも充実した読書生活を送れたと思っている。新たな軌跡がそこに刻まれることになった。


2/7
フェルナンド・ペソア『不穏の書 断章』
2/25
福岡伸一生物と無生物のあいだ
3/21
ミハル・アイヴァス『もうひとつの街』
3/31
伊坂幸太郎『ガソリン生活』
4/19
奥泉光いとうせいこう『小説の聖典
4/27
東野圭吾ガリレオの苦悩』
5/13
恩田陸『訪問者』
5/18
東野圭吾『聖女の救済』
6/10
宮部みゆきICO霧の城 上』
6/12
宮部みゆきICO霧の城 下』
6/19
高橋源一郎銀河鉄道の彼方に』
7/4
小川洋子『ことり』
8/7
山尾悠子『夢の遠近法』
8/10
伊坂幸太郎『死神の浮力』
8/18
川上弘美『晴れたり曇ったり』
8/19
山尾悠子ラピスラズリ
8/27
吉田篤弘『水晶萬年筆
9/19
吉村昭『破船』
9/25
佐多稲子『樹影』
10/12
堀江敏幸『河岸忘日抄』
10/26
ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』
10/29
本多孝好『Memory』
11/4
穂村弘『現実入門』
11/10
山崎ナオコーラ『昼田とハッコウ』
11/17
安部公房箱男
11/23
鹿島田真希『一人の哀しみは世界の終わりに匹敵する』
12/1
竹西寛子『蘭』
12/3
吉田篤弘『針がとぶ』
12/4
吉田篤弘『それからはスープのことばかり考えて暮らした』
12/4
吉田篤弘つむじ風食堂の夜
12/10
吉田篤弘『空ばかり見ていた』
12/13
吉田篤弘『小さな男*静かな声』
12/14
吉田篤弘『つむじ風食堂と僕』
12/26
吉田篤弘『78 ナナハチ』


 こんな感じになる。34冊。偏りがあるけれど、充実していた。
 そして、例年通り、ひそやかに今年の10冊を勝手に決めたいと思う。順番に大きな意味はなく、どの本も大切な1冊になったことは言うまでもない。


 ①堀江敏幸『河岸忘日抄』
 ②佐多稲子『樹影』
 ③山尾悠子『夢の遠近法』
 ④吉田篤弘『それからはスープのことばかり考えて暮らした』
 ⑤山崎ナオコーラ『昼田とハッコウ』
 ⑥高橋源一郎銀河鉄道の彼方に』
 ⑦小川洋子『ことり』
 ⑧竹西寛子『蘭』
 ⑨安部公房箱男
 ⑩伊坂幸太郎『死神の浮力』


 昨年よりは少ないけれど、選んだ10冊にはそれぞれ違ったかたちの思い入れがある。
 堀江さんの『河岸忘日抄』は、何度も挫折しながら、今年ようやく読み終えることができた。あのゆるやかさに身を委ねる心地は忘れられない。
 佐多稲子の『樹影』は、文句なし、今年最も心揺さぶられた小説だったと言える。人間を深く見つめる眼差しの熱さに、心を打たれた。
 山尾悠子さんの『夢の遠近法』は、薦めてもらって読んだ一冊。宝石が詰まったような極上の短篇集だった。幻想文学に陶酔する経験ができた。
 吉田篤弘さんは、見ての通り今年本格的にどっぷりはまった作家である。薦められたわけではなく、何気なく手に取った『水晶萬年筆』が素敵で、続いて『圏外へ』を買ってみたものの読めず、それならと読みやすそうな短篇集『針がとぶ』を手に取って、完全に心を奪われた。特に『それからはスープのことばかり考えて暮らした』は、そこにいる人たちと一緒にいる時間がいとおしくなる物語だった。ただ、できるならすべて選びたいくらい吉田作品は好きである。もう一度小説を書き上げることができたのは、まぎれもなく吉田さんの書く物語の後押しがあってこそだと思う。
 山崎ナオコーラさんの『昼田とハッコウ』は、ナオコーラ作品をあの長さで、しかも書店の物語で読めたことがうれしかった。直球で飛んでくる言葉にしびれた。
 高橋源一郎さんの『銀河鉄道の彼方に』は、初めて読了した高橋さんの長編。小説の可能性を深く深く考えることができる、素敵な読書体験だった。思い返せば、このあたりから何とか今年は書きたいという気持ちになってきたのかもしれない。
 小川洋子さんの『ことり』は、今年念願かなってご本人にお会いできたこともあり、さらにその文章がつくる世界の静けさと美しさに惚れ直したため選んだ作品。改めて、強い影響を受けてしまっていることを感じる。
 竹西寛子さんの『蘭』は、友人に薦められて読みたいと思っていたものの、絶版で読めず、今年に入ってようやくブックオフで買えた。読んでみたら本当に、神がかり的な短篇が収められており、息を呑んでばかりだった。
 安部公房の『箱男』は、なかなかきっかけがなくて読めなかった安部公房作品を、これまた友人の薦めで手に取ることになった。シュールだった。書き手のあり方、創作のあり方をいろいろと考えた。『砂の女』を買ったもののまだ読めていないので、来年に持ち越しとなった。
 伊坂幸太郎の『死神の浮力』は、千葉さんとの再会を寿ぐべき一冊。痛快な復讐劇だが、同時に切なさもある。死を扱いながらも決して重たくならないのは、本当に伊坂作品の大きな魅力となっていると思う。


 ほかにも語りつくせばきりがないほどだが、来年もまた、素敵な読書生活を送れるように祈りつつ。願わくば、もっともっと小説のことをたくさんのひとと語れるように、読み継ぐことで、誰かと自分とをつなぐような読書をしていきたいと思う。