郊外

 都会に住んではいるけれど、郊外に惹かれる気持ちは強い。幼稚園から中2までを過ごした大阪市の北部が、いまだに好きな土地だからかもしれない。交通量の多い道路はあるものの、おおむね静かで住みやすいベッドタウンだった。
 中3から大学卒業まで住んでいた現在の実家の奈良は、郊外ではなく田舎なので、のどかで落ち着く環境ではありつつも、街並みにはそれほど惹かれない。


 電車の窓から外を眺めるとき、なんとなくいつも目を奪われるのは、何年か前まではきっと何もなかったようなところに巨大な新興住宅が建ち並んでいる風景で、真新しい人工物と自然が混じり合っている感じが、どうしてだかわからないのに惹かれる。
 辺鄙なところにある、大型ショッピングモールと、高層マンション。
 けれど何もかも新しいわけではなくて、ずっと昔からあるような団地や、瓦屋根の一軒家もあって、遠くには山が見える。少し歩けば川べりに出て、河川敷では少年野球チームが傾いた日差しの中で白熱した試合を繰り広げている。


 彼らの地元はこの場所であり、この土地を将来懐かしむことになったとき、一体どんなことを思うのだろうと、ふと考える。一人の人間を形作る背景に、どんな景色があるのか、そこで生活したことで、どんな風景に心が惹かれるようになるのか。


 旅行へ行ったときにも感じるのは、どこにだって人は住んでるんだよなあという至極当たり前のことで、その土地で暮らすというのはどういうことなのだろうといつも思いをめぐらせる。


 ここで小学校時代を過ごしたらどうだっただろうなと、あるはずもない自分の人生を空想したり、いつかこういう場所に住んでみたいなと考えたり、そんなことをしながらのんびり電車に揺られているのが、最近、いや、もしかするとずっと昔から、好きなのかもしれない。