あとがき

 前の記事、「月面のフード」のあとがきではないことを、先に断っておきます。

 
 就職してから初めて、きちんとゼロから小説を書き上げた。
 執筆期間はちょうど1週間。これまでひたすら読書はしてきたものの、アウトプットした言葉をまとまった作品にすることができなくて、もどかしい思いを抱えたまま日々を過ごしていた。それがようやく、原稿用紙にして44枚という短さではあるけれど、書き上げることができた。
 仕事を始めてから出会うひとに、大学時代のものを読んでもらいながら、少しずつ、現在の自分との乖離が気になってきて、なんとか過去の作品に代わる自分の代表作めいたものを書きたいと思い続け、やっとのことで、ある程度納得できる形になったと思う。


 3年以上経てば人間も変わるもので、個人的なことになるが、これまでの作品と大きく異なるのは、主人公が自分の投影ではないという点が挙げられる。ある程度の長さを持ったものを書くとき、どうしたって、主人公は自分自身が日ごろ考えている思いを反映した人間になってしまっていたのだけれど、今回はそうではない。
 さらに、今回の作品では、作品の持つ世界として、自分が好きな世界を描き出すことができたと思っている。書きながら、ずっと書き続けていたいと思った瞬間が何度もあった。
 何としても、かつての自分を超えたいという思いが、この1週間、書き進めるための原動力になった気がする。


 読んでどう言われるかわからないけれど、誰かひとりにでも届けばそれでいい。と、心にもないことを書いて、あとがきを終えたい。