2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

会話が開く余白現象を目指して

2022年1月、これが10本目の記事となる。ここまで本の感想が5つ、文具の話が3つ、掌編小説が1つ。雑で適当にならないように、一定の長さのものをと思って、この量を1か月に書いたのは、たぶん働き始めてから初めてのことだと思う。 が、さすがに今回、仕事が…

そこはかとなく書きつくれば

スケジュール帳以外のノートを使うのが苦手だった。 美しいノートは世の中に溢れているのに、それを手にしても、どう使うのが良いのか、わからない。「何を書いてもいいから自由に使おう」そう思って、何かを書くために買った何冊かのノートは、いずれも最後…

【掌編】落日

読みかけの本が、読み終わらないまま終わる休日。書きかけの手紙や、色を塗っていない絵の下書き、編みかけのマフラーに、貸しっぱなしの小説。人間は生きているかぎりずっと何かの途中にいる。そして、自身の終わりを経験することはできない。 本を読み終え…

閉じられた表現をまとって

鷲田清一『ちぐはぐな身体 ファッションって何?』(ちくま文庫)を読了した。 著者が高校生に向けて語るように書いたもので、平易な言葉で服装を通した自己と他者に関して書かれている。主題であるファッションとはあまり関係のないところで、いろいろと思…

文具沼のほとりから【後篇】

木軸のボールペン、LAMY2000ブラックウッドの書き味が良すぎる。 手触り、握り心地、書きごたえと、どれをとっても素晴らしく、手で文字を書くことがそれほど好きではなかったはずなのに、ずっと書いていたいとすら思える。優れた筆記具は、使う人間の思考や…

文具沼のほとりから【前篇】

文房具熱が高まっている。その高まり方が年末にかけて結構急激だったので、改めて2021年の文房具事情を振り返ってみたい。 働き始めてから2021年で11年目になることを思って、4月にボールペンとシャーペンをそれぞれ新調した。ボールペンはジェットストリー…

物憂さは影となりて消えゆく

竹西寛子『式子内親王|永福門院』(講談社文芸文庫) 形而上へ思いを馳せる和歌が、「新古今集」の頃から存在していたということ。夢とうつつのあわいを彷徨うその言葉に「憂き世」を思わざるをえない(「式子内親王」)。そして、叙景に徹することで逆説的…

失われつつある情緒を求めて

岡潔『春宵十話』(角川ソフィア文庫) 「人の中心は情緒である」と始まる数学者のエッセイは、響いたり刺さったりする言葉が多かった。 数学という、論理の極北にあるような営みも、それは自然との調和を抜きにしてはかなわず、それを可能ならしめるのは人…

読めなかった本を読むために

読もうとして、うまく自分の感覚と合わなかったり、難しいと感じたりして、挫折してしまった本がたくさんある。それらは、挫折したとはいっても、人生において一度は憧れ、自分の糧としたいと願った本たちであり、文学史上に名が刻まれている以上は、その刻…

拍節に耳を傾けること

明けましておめでとうございます。 2021年は、仕事や読書の面ではおおむね頑張って、それに伴う結果も得られたと思っています。それ以外がなかなか思うようにいかず、精神的にきつい状況もありました。抱え込むほかどうしようもないものをどうにかできるよう…