2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

秋の枯れ葉のものがたり

深まる秋、降り積もる落ち葉を踏みしだいて歩く先に、長い冬の眠りが待っている。萌えいずる春を迎えるまで、ゆっくりと目を閉じる彼ら。 荘厳な額に入れられた銅版画の物語がここにある。 山尾悠子 『ラピスラズリ』(ちくま文庫) ここではない遠い世界の…

辺境の聖域

泊りがけの遠出がしたくて、石川県に行くことにした。旅程の詳細は特に決めず、ホテルの予約も行き当たりばったりの、気楽な放浪である。昨日、兼六園と金沢城公園をゆったり観光して、今日は朝から県立美術館と21世紀美術館をめぐり、泉鏡花記念館にも行っ…

湖に降る敵討ちの雨

過去に読んだ小説で出会った彼のおかげで、雨が降っていると、ときどき死について思いをめぐらせるようになった。人間に興味はないが、担当する人間にはきちんと調査を行い、判断を下す。淡々と「仕事だからだ」と言う彼が、不思議なほど恰好よく見えてくる…

文章のゴシック建築

幻想、という言葉の響きは、いつだって言い知れぬ魅力に満ちている。けれど、魅力を感じながらも、これまではずっとそびえ立つ言葉の城を、遠目から眺めていただけだったように思う。城門はつねに開放されていたにもかかわらず、外観の美しさから、一度入っ…