現在地の確認

 誰しも過去を振り返りながら前に進んでいくものだとは思うけれど、時が経つにつれて、頻繁に思い返していたころの記憶が薄れていくのを感じる。仕事を始めてから何度となく振り返っていた、就職が決まったときのことも、最近ではあまり考えることもなくなっている。


 遠くまで歩いて進んでいくのと同じで、後ろに見える景色はつねに遠ざかっている。ただ、そうやって現在地を確かめながら、きちんとどこかに向かって進んでいることを実感するのが、生きていくということの一つの側面なのだろうと思う。


 大学のときに書いていたような、雑多なことがあまり書けなくなって久しい。書く回数が減ってしまっていることで、書くときはちゃんとしたものを、という意識が変に強まって、力が入るのだろう。


 自分のことだけを考えていればよかったあのときとは違って、受け持つ彼らがあって、今この場所にいるのだと、つねに頭の片隅にあるので、いつどうしていようとそういう自己は持ち続けているのが自然になってきた。緩める部分もあるけれど、確かな存在意義を持って生きていられることは、しんどいわりに精神的な支えになっているのだと思う。


 でも、ここにこうして、同じようなことしか書けないのも最近少しさみしい気がしている。一つのことに全力を傾けていることが、自分でもよくわかるのだけれど、外に目を向けることも、多少は必要なのではないかと、思わないでもない。


 できることをしていくほかないけれど、これでいいとかこれでよかったとか、現在の行動に価値を見出せるかどうかは、それが過去になってからでないとわからない。少なくとも今、振り返って見える景色は悪いものではなく、感慨深く眺めていられるだけのものが、目に映っている。
 前に進み、一つひとつ上り、振り返り、見下ろす景色の美しさを期待しながら、一方で、それがどんな景色であっても、美しいと思える心を持っていられるように、進んでいければと思っている。