2016-01-01から1年間の記事一覧

新しい時間の始まり

思い返せば実にいろいろなことがあった11月だった。 大きな出来事としては二つ。一つは原稿用紙換算100枚の小説を書き上げたこと、もう一つはミラーレス一眼を購入したことである。 小説は、ぼんやりと書きたいイメージだけがあったのは去年の今ごろで、完成…

秋風の吹く先

8月の終わり、路地に吹き込んだ風に運ばれるようにして、秋めく街路にたどり着いた。言葉でできた建物に、目移りしながら進んでいく日々。穏やかで平和な街並みはずっと居心地がよくて、流れる時間は緩やかでいとおしく思える。 忙しさに拍車がかかる10月に…

【旅行記】地上に広がる銀河を求めて

■8/15(月)松本〜姨捨 名古屋駅を発った電車は次々とトンネルを抜け、木曽路をゆく。車窓から見える鮮やかな緑の稜線は高く、雄大だった。点在する家、ゆっくりと走る軽トラック、広がる水田の緑もまた眩しく、ああ、長野に来ているのだなという実感が強ま…

【掌編】夕凪

水平線上をゆっくりとなぞるように進むフェリーを見ていた。沈んでいく夕陽に照らされ、穏やかに揺れる海が眩しい。港からこうして海を見るのも今日で最後なのだと思うと、日暮れがたまらなく悲しくなって、どうにかして夜を海の向こうに遠ざけたくなる。 荷…

【短篇】祈り

いくつものトンネルをくぐって二両編成の電車が到着した場所は、里という言葉が自然に浮かんでくるほどのどかで穏やかなところだった。辺境特集の企画が組まれた旅行雑誌の取材で、私は都心から三時間ほどかけて、その村にやってきたのだった。 自動改札機は…

夢の通い路

人が鏡なのだとしたら、そこに映る自分と、その自分の後ろにある背景の街並みもまた、それを映してくれる人間によって姿を変えるのだろうと思う。 路面電車が向かう郊外の景色は雨に濡れ、新緑の水底に沈んで、ふるさとの川岸にたどり着く。曇天の堤防で、流…

波紋を待つように

今の自分がどのようなことを考えて日々を過ごしているのか、それを言葉にせずにいると、何かがくすぶり始めるらしい。種火は燃え上がることなく、煙ばかりが立ち昇る。話すことも書くことも、やはり大切なのだと思う。どちらか一方だけでは、なかなかうまく…

5年を終えて

新しい手帳を買うとき、目の前にはこれから先の一年が広がる。世間の年度替わりは4月だけれど、仕事の性質上、3月から次年度が始まるので、今日と明日の日付をまたぐことは、ある意味年越しと同じくらい大きなもののように思える。 6年目に入る。5年も働いた…

とりとめのないこと

思えば昨年11月に療養して以来、放浪記と本の感想と掌編が続いて、日記らしいことを書いていなかった。直接書こうが書くまいが、仕事が大変なのは変わらないので、それ一色になるのも避けたかった。 3月から別の場所に行ければいいのだけれど、それは2月半ば…