文具沼のほとりから【前篇】

 文房具熱が高まっている。その高まり方が年末にかけて結構急激だったので、改めて2021年の文房具事情を振り返ってみたい。

 

 働き始めてから2021年で11年目になることを思って、4月にボールペンとシャーペンをそれぞれ新調した。ボールペンはジェットストリームプライム(ノック式)に、シャーペンはデルガードLx(丸善限定のガンメタリック)に。この買い替えは、何ということはない気分転換の一つだったと思う。ただジェットストリームプライムの書きやすさは感動もので、もう普通のペンには戻れない、他のペンは使えないと思った。

 

 そのまま12月になって、年末の9連勤を迎えることになった。昨年は間の25日に休みを取れたのに、それがなくなった形だった。無事に乗り切りたいという思いと、何とかモチベーションを上げたいという思いで、気になっていたシャーペン、カヴェコのペンシルスペシャルに手を伸ばした。デルガードLxが、握り心地は良いのに引っ掛かりが多いような気がしていたというのも理由になっている。デルガードLxを買うとき目に留まったぺんてるオレンズネロは、評判通り重心は最高だが握り心地が好みではなく見送りを決めていたのだけれど、カヴェコは重心、握り心地、書きやすさも群を抜いていて、過去に一度試し書きしたときの記憶が忘れられず、買うなら今だろうとそこで決意した。

 

 学生には買えない価格のカヴェコ ペンシルスペシャルを手にしたことで、9連勤に臨むモチベーションは高く、順調な出だしではあった。また、購入の際に参考にしたレビュー動画をきっかけに、仕事から帰ってからの癒しとして、他の文具レビューを見て過ごしていた。そのあたりから、木軸のボールペンに興味を持ち始めたと思う。

 

 そんな中で事件は起こる。9連勤の6日目、連絡の行き違いから、ありえない状況が起こり、その対処に心身ともに疲弊してしまった。2021年で一番腹が立った出来事である。その怒りの矛先が、散財への衝動に向き、Amazonの在庫が残り2点だと確認した勢いに任せて、LAMY2000のブラックウッドを購入した。こうして、木軸のボールペンを迎えることになったのだった。

 

 決断を後押ししたのが、ジェットストリームプライムが、他のジェットストリームインクと互換性があるという点である。仕事柄、(意味がわからないと思うが)オレンジを赤・青よりも使うため、オレンジのインクをプライムに差し替えれば、より快適な手元になると気づいてしまったのが大きい。書きやすく、愛着も湧いたジェットストリームプライムを使いつつ、LAMY2000を使っていける。

 

 そう思ったとき、ペンケースが欲しくなった(こういうのがよくないと思う)。普段、ペンケースは持つけれど、メインのペンは胸ポケットに収納している。ただ、高価なペンたちを粗雑に扱いたくはなく、かといってペンケースに入れて、他のペンとぶつかって傷つけたくもない。一本ずつが収納できるペンケースが欲しい、という思考である。
 癒されるために見ていたレビュー動画で、どうしてもレザーのペンケースが欲しいと思いながら、当然のように、レビューされているものは在庫がなかった。そもそもレザーのペンケースは容量が少ないものが多い。ボールペン、シャーペン、オレンジ、赤、青の5本が収納できるレザーのペンケース、と考えたとき、なかなか要望に適うものは見つからなかったのだけれど、Quiという、文房具屋さんがデザインし、職人の方と共同で作られたプエブロレザーのペンケース(色はオリーバ)と、高価ながら在庫1で出会ってしまった。
 2時間くらい悩んだと思うが、まだ入荷見込みがあるかもしれないとはいえ、在庫1(かつ他の色は軒並み品切れ)というのが買わなかったときの後悔を呼びそうで、今年は賞与を全然使っていないということを言い訳にして、購入に踏み切った次第である。

 

 届いたのは9連勤が終わった年末。まさか年末に間に合うと思っていなかったので、嬉しい驚きとともに開封したら、その美しさに心身の疲れが飛んだ。前述した5本のペンと、定規、消しゴム、シャーペンの芯を収納し、そのすべてが革の上に並んでいるのが壮観で見惚れた。仕事を頑張ってよかったと思った。

 

 こうして、手持ちの筆記具が一つの完成を見たのだけれど、この話には続きがある。
 この記事を書こうとして下書きをしたときには、一つの記事にまとめるつもりだったのだが、購入の経緯だけでこれだけ長くなってしまった。本題はここから、と思いながら、一旦ここまで。後篇に続きます。