思い描いた景色のために

 遠出を自粛することに決めたものの、工場夜景は撮りたくて、夏の連休では1年3ヶ月ぶりに四日市へ日帰りで行った。電車に約2時間ほど揺られ、駅から歩いて30分で撮影場所にたどり着く。道のりはわかっていたので、昼過ぎに家を出て、夕方に到着し、日没後の景色を写真に収めて帰る。それだけの旅。
 
 思い返せばはっきりと、それだけのためにそこまでしているのだなと思えてくるのだけれど、そこまでしてもいいと思える何かがその場所にあるのだとは思った。
 
 気のせいかもしれないが、写真を撮ることが、最近ようやく一つの表現としてできるようになってきた実感がある。きれいなものに心を動かされ、その反動としてシャッターを切るというような受動的な撮影姿勢ではなくて、撮りたいものを撮りたいように撮ることに心身を尽くし、思い描いた絵をその一枚に収めるという姿勢。写真がうまくなったかどうかはわからない。ただ、たくさんの人の写真を見ることで、撮りたい色合いや雰囲気や被写体についてのイメージが膨らんできている気はする。
 
 本職とはまったく関係ないものの、何かを深く知っていき、自分自身のなかで何かが向上していく実感が得られるのは、物事を続けるうえで確かな喜びになる。撮りたいものや欲しいレンズのことばかり考えているせいで、あまり読書は捗っていないのがよろしくないとはいえ、人生においてそんな時間が多少はあってもいいのではないかと思う。