回想の光

 気持ちを言葉にする時間が、忙しいなかにもきちんと確保されていて、渦を巻いたり混沌としたりするようなことが減っているからか、ここに改めて書き出すのにずいぶん悩んでしまった。
 

 それを表現するための言葉はすでに見つかっていて、しかもそれ以上に言いようもないのだけれど、声になった言葉が消えてしまわないように、確かなものとして残しておきたいと日々思っている。光の粒を見下ろす満ち足りた時間は、真冬の風の中でも優しい温もりを湛えていて、その一日をかけがえのないものに変えている。
 変わらない過去を悔い続けることもあるけれど、変わることのないその揺るぎなさが、特別な記憶を特別なままに残してくれるのだと思うと、思い出すたびに心強く思えてならない。記憶は、思い出すことでずっと消えずにあり続ける。


 去り際のさみしさがなかったわけではない。けれど、それは一つの始まりで、手元には確信をもったこれからがあった。きっとその日をことあるごとに思い出すであろうこともどこかうれしく、幕が開いたその瞬間に差し込んできた光は、遠ざかる過去の地平から、ずっと現在を照らし続けてくれる。そんなふうに思った。