広がっていく虚構

 現在進行形で小説を書いている友人が2人もいることを考えながら、自分も何かそろそろ新しい作品を書き始めたいと思い、真っ白な画面に向かってじっとしていたら、あ、これはもしかしたら、という瞬間が舞い降りた。
 いつものことながら、何気なくそれは浮かんでくるもので、毎度のことだけれどびっくりする。どこからともなく思いついたその一行目の文章を、おそるおそる打ち込んでみる。
 一文書いてみると、二文目、三文目が浮かび、流れるように言葉は出てきた。数行書いて読み返してみると、それは悩んでいるときとは全然違う、あまりにしっくりくる文章で、自分で書いたのにうれしくなった。


 わかりやすく言ってみると、ふと思いついた文章をいざ書いてみたら「これいけるかも」と手応えを感じてテンションが上がった、ということです。
 書きたいなあと思う話は断片的にいろいろと考えていたんですが、それとはまったく違う場面設定で突如思いついてしまった一文に、今までにない可能性がありそうでびっくりしてます。


 小説を書いたことがあるひとならわかると思うんですけど、冒頭を少し書いてみて、まだその先のことを何も詳しく考えていないとき、どうやって物語を展開させるか、流れや細部をじっくり突き詰めていく作業って、ものすごく楽しいですよね。
 Aという場面を書いてみることもできるし、Bを先に書いてみることもできたり、あるいは過去を顧みる描写を挟んでみたりとか、ほかにも想像できることはいろいろあります。
 世界を創り出す実感みたいなものを、ひしひしと感じる瞬間だと思います。


 まあ当然書き上げられる見込みはまだないんですが、数行書いた段階で捨てるのが惜しいと思う文章なので、なんとか頑張ってみようと思っています。
 長編になるか掌編にとどまるか、未完で終わるか。
 どうなると思う? と自分が書くのに誰かに訊きたい気分ではあります。