現実から遠い本棚

 むさぼるように本を読む、ということを、今になってようやく経験しているような気がする。
 下手に自己を分析するよりも、過去を見つめる真摯なまなざしが文章となって表現されているものにふれるほうが、よっぽどじぶんを語る言葉を手に入れることにつながるのではないだろうか。


 そんなふうに、焦る自分をごまかしたり、逃げているように見える自分を正当化してみたりしている今日この頃です。まずいなあとは思っています。けれど、やらなければならないことは、やらなければならない時期になれば必ず手をつけてやり遂げてきたし、どれほど逃げていても、それを上回る不安に駆られたらちゃんと向き合うだろうという自負もあります。
 と、そう語ることがすでに言い訳めいているようにも思えて気が引けたりします。


 で、そんなことは大したことではなくて、予定通り某巨大書店Jに突撃を試みてきました。
 いやー、さすがです。頭が下がります。
 須賀さんの全集はすべて揃っているうえ、ユルスナールの単行本もきっちり新装版が置いてありました。今回にかぎり、というか大体本に関して、出費は散財でも浪費でもなく、有益な投資です。
 ということで、(あれだけなかったのに平積みされていた)全集1巻と、ユルスナールの代表作『ハドリアヌス帝の回想』を購入いたしました。
 なんと言っても新装版の巻末エッセイには堀江敏幸さんの文章が載っているのだから、学校の図書館で古いほうを借りて読むだけで満足できるわけがない!
 もしここになければ、某南米的ショッピングサイトAに発注をかけてやろうかという覚悟までしていましたが、そうならずに済んでよかったです。
 やっぱり、手にとって装丁の手触りを確認しながら書き出しを読んで、読んでいる自分を想像してみてから初めてレジにもっていく、という一連の流れを経由しなければ、本を手にする幸せは半減すると思います。
 欲しかった本を見つけて手にとり、レジにもっていくまでの過程は、すでに書店の醍醐味ですよね。


 とか言ってるわりに、値段への躊躇からカウンターへの一歩を踏み出すことがなかなかできず、レジにもっていかないまま欲しかった本を抱え、友人と数時間しゃべりながら歩きまわって逡巡していたんですが。


 本の話題は尽きないですけど、そろそろ別のことを書きたいとも、一応思ってないわけではないです。
 でも多分、買った本を読み終えたら感想なりレビューなりを書いてしまうかもしれません……。