崩れた体調の隙間から

 2日間睡眠を充分にとったにもかかわらず、身体のだるさと頭の重さが抜けなくて病院に行ったら、夏風邪と脱水症状と診断された。暑い時期に風邪を引いた記憶がほとんどなくて、記憶にないということはその経験は初めてのようなもので、春先や冬場に引く風邪とは違うその症状に得体の知れなさを覚えていたのが、診断結果の名前がついて少しほっとした。
 薬を飲んで出勤して、一応時間通り働いて、残業はせずに職場を出て帰って、考えるのはずっと、文章を書くということについてだった。書かないこと、書こうとしないことを、自分自身がよしとしていない。何かに急き立てられるようにして、書くことがあるわけでもないのにこれを書いている。


 自分の中にある、このエネルギーは何なのか、いまだにわからない。かつては、人恋しさやさみしさ、会話の足りなさ、そして、自分のことを誰かにわかってほしいという気持ちだったような気がする。ただ、思ったことを話したり、考えたことを共有できる相手ができても、書かない時間が増えると妙な焦りになって、書くことへの渇きのような、あるいは飢えのような思いが湧き出してくる。
 湧き出したそれを、物語の形にするか、形のないままこうして流すかは、手元にある時間が決めるのだろうけれど、虚構を編み上げたい気持ちがずいぶん大きいのだと思う。


 考えたい、知りたい、書きたい。苦しいから、つらいからという思いより先立つそれらの欲求を叶えるために、何をどのように書きたいのか、なぜ書きたいのか、もう少し突き詰めたい。
 妙に時間ができるとすぐにこういうことを考え始めることが、何か特別なものを生み出すきっかけになるはずだと、わずかながら信じている。たぶんそれは、揺るがない。