海へ

 いろんなひとに、まだまだ話し足りないことがあって、いろんなことを、まだまだやり残している気がして。それでももう、戻れないところまで来てしまったのだなという、微かな実感がある。
 長い長い川を下りきって、海原に出た。そんな感じだろうか。
 水に浮かんでいるのは変わらないけれど、そこには上流も下流もない。揺らめく海面を透かしてうかがえるその深さと、水平線の遥か向こうからやってくる波の起伏に、心もとなさでいっぱいである。
 どこへ行こうか、あるいは、どうやって進もうか。
 河口がまだすぐそばに見えているぶん、不安は大きいのだろうと思う。
 でも、はっきりしているのは、進むしかないということだ。


 それぞれの新しい出発が、幸せに満ちていることを祈りながら。