真実を語ること

 この時期まで就職活動を続けているのにこんなことを言うのはおこがましいかもしれないし、そう言える立場でもないのかもしれないとも思った。けれど、この時期まで続けているからこそ、自分に嘘をついて就職先を決めることなど絶対にできないと思っている。


「内定を出す場合、就職活動はそこでやめてもらって入社を決めていただかなければなりませんが、その点はどうお考えですか?」


 訊かれ、すんなりと首を縦に振れなかった。選考途上にある企業に対しての可能性や縁を、そう簡単に捨て去るわけにはいかない。もし躊躇なくうなずくとしても、そうやって自分を偽ったのちに待っているかもしれない後悔のほうがよっぽど怖かった。
 心苦しさを抱えたまま、ためらいと迷いを素直に伝えて面接は終わった。


 多分電話が鳴ることはないと思う。
 でも、失ったものより得たもののほうがずっと多い。