おもい

 事後研修に行ってきたんですが、特に言うべきことはありません。


 レポートがどうのこうの言ってますが、一昨日学校へ前期の成績を受け取りに行った際、図書館で佐多稲子の短編集『女の宿』を借りて、現在少しずつ読んでます。
 とりあえず3作品を読み終えたところですが、以前読んだ『時に佇つ』より気に入りそうです。なんて無駄のない、洗練された日本語なんだろう、と思います。
 表題作「女の宿」の冒頭、外の騒がしさに目を覚まし、徐々に意識がはっきりしてくる「私」の様子が、実に見事な文章で書かれている。
 何気ないその冒頭たった2ページで、この人のすごさを改めて痛感しました。


 そして何より、彼女の使う「おもい」という言葉が心にしみます。じっくり文章を読んでいて、「思い出す」と書いてある箇所もあれば「おもい出す」「おもう」と書いてある部分もあり、かつ「思い」や「想い」と表現されているところもある。
 感じ、心に抱いたこと、そして頭で考えたこと、それぞれに別の「おもう」をあえて当てている表現の繊細さに感嘆しています。
 これを僕が自分の小説で「おもう」と表現したところで、同じような表現には到底なりえない。「おもう」と「思う」とを明確に区別して書き分ける表現力、言葉への意識が彼女にはちゃんとあるからこそ、それは別の意味を持ちうる「おもう」になる。
 一文ごとに込められている「おもい」は、だからこそ読み手にしみ渡るように響いてくる。
 一人の書き手として、まだまだ言葉への意識が足りないことを自覚しています。


 ……あんまりうまく説明できていないような気もしますね。
 まあでも、小説を書くことにまた意欲的になっています。


 ゼミのレポート、佐多稲子研究にできたらなー。