まっすぐな軌道を描きながら

 見える景色が違う、と以前ここに書いた。目の前のことと対峙するだけで何もできなかった一年前と比べて、そのあまりの違いに自分でも改めて驚く。責任の重さに押し潰されそうになっていたのはもはや遠い昔のことのように思え、その重さは何も変わっていないどころか増しているはずなのに、それをぴったりと身にまとうことが日常になっている。気持ちを引きしめてくれるスーツのように、まっすぐな気持ちで日々を送る。


 そして、昨年と段違いに今、仕事が楽しい。ひと通りのことがこなせるようになって、一つひとつのことを処理する速度が上がって、見通せる視野が開けて、晴天の空の下を駆け抜けているような心地がする。息切れが少なくなるくらいには、心のタフさも備わってきただろうか。


 就職、入社と経て、仕事に慣れるという基本的な目標はとうに達成されているわけで、ここから必要なのは、今後自分がどうなっていきたいかという展望だということははっきりしている。ある程度仕事をこなせることに安住すると、その途端に成長が止まるのだと理解していなければならない。
 さらなる高みに向かうために、どんなことを考えればいいのだろう。


 あれこれ考えながら、昨年はそれほどできなかった読書に今は勤しんでいる。
 どんなかたちであれ、いろいろな考え方、価値観に触れていくことで、人間的な器の大きさを広げていく必要を感じている。まだ十年ぐらいは、自分より年齢の高い人たちと信頼を築いていかなければならない。
 直接関わり合う機会が増えて、その楽しさを噛みしめながらも、難しさもよくわかり始めている。人として、つねに試されている仕事であることを、身に染みて思う。


 些末な事柄に頭を抱えることも多々あれど、それでも子どもたちが成長していく実感は何ものにも代えがたい幸せで、彼らの人生の途上に自分の存在があることは無上の喜びと言わずに何と表現しよう。
 その喜びを、人のために自分を動かし続ける糧にして生きていく。


 安心してほしい、笑顔で働いているからと、二年前の自分に伝えたい。日付を見ながらそんなことを思った。


 年明けからクライマックスを迎え、三月に幕を下ろす物語の、今は盛り上がりの起点にいる。いよいよだ、と期待に包まれている。