目に見えぬ冬の終わり

 傘を伝う雨粒が、アスファルトに落ちて、側溝へと流れていく。天と地の無数の結び目をたどって街を歩きながら、今日はマフラーのいらない日だと思った。駅前の人通りはいつもと変わらない。同じ日は来ないけれど、普段通りの日々はそこにあって、変化というものはきっと、繰り返しの先に生み出されるものなのではないかという気がした。風の音に秋の到来を感じる和歌があるように、濡れた地面を乾かす晴れ間に春がその眼差しを覗かせるのかもしれない。暖かい陽の光が街を彩る季節を、灰色の滲む曇天を見上げて待ちわびる。