おくりもの

 今春の異動が決まり、現在の職場を離れる先輩へ、お世話になったので何か贈りものをと買い物に出かけていた。人に何かものを贈った経験が乏しいうえ、気に入ってもらえなかったら、と優柔不断で臆病な自分の一面に縛られ、ずいぶん悩んだ。


 バレンタインのお返しに、と賑わう雑貨店で頭を抱えながら、選んだのは、職場でも自宅でも使えそうなマグカップである。その人に合ったものを、と考え抜いた末、結局無難な選択に落ち着いた。
 よく耳にすることではあるけれど、プレゼントというのは、贈られた品物の価値以上に、贈られる側を思いやった時間や、選んだ過程に価値がある。自分の一年目を支えていただいた感謝が、少しでも伝わればいいなと思いつつ。
 きれいに包装された商品を受け取り、幸田文の『包む』を思い出した。


 ささやかながら、久しぶりに日記らしいことを書けたような気がする。