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少年は本棚から一冊ずつ、言葉の断片を取り出し、読もうとしていた。
読めなくてもいいから、見せてほしいんです。
そう頼み込んできた少年の言葉に、彼は従った。もともと何かを手伝えるわけではなかったけれど、少年は、手伝ってほしいとも言わなかった。
静かに言葉のかたちを見て取り、「この文字はすごく丸みがあって優しい感じがする」だとか「硬くてごつごつしている」というように、少年は読めずとも文字そのものから懸命に何かをつかもうとしていた。
意味という名前で呼ぶことのできない、別の何かだった。
彼は少年のとなりで、言葉をつなぐ作業を再開した。
弱まった雨はしかし、しぶとく降り続いている。