2012-01-26 来訪 破り捨てられた手紙のかけらを拾って、もとのかたちにつなぎ合わせていくように、言葉は慎重に選ばれ、文字になっていく。 そのとき、扉を叩く音がして、彼は立ち上がった。 扉を開けるとそこに、一人の少年が立っている。少年は言った。 「言葉を、いただけませんか」 声を持たない彼は不思議そうに首を傾げた。断片しかないこの場所に、少年の望む言葉があるとはとても思えなかった。 けれど、雨に濡れた少年の姿を見て、追い返す気にはなれなかった。