上流

 誰かに何かを伝えたいというのはきっとものすごく傲慢な思いで、その思いが強ければ強いときほど、伝えられる側のことは何も考えられていない。
 彼はそう思って、そして、そう自分に言い聞かせて、書いた言葉をすべて消した。何が書かれていたのかわからないどころか、何かが書かれていた痕跡さえ残さないように、真っ白な紙を復元した。


 消し去られた言葉がまた、流れていく。