窓際

 窓ガラスを叩く雨が、強くなったような気がした。
 けれど、晴れていようが雨が降っていようが、言葉を紡ぎ続けるのは変わらない。それが生きるということだと思っている。


 伝えたいから書いている。それは間違っていない。
 ただ、伝わったところで何になるのだろう。
 時折渦巻くその疑念が、筆を止める。雨が石を穿つように、言葉の雨粒は、大切な何かにひびを入れてしまうことだってありうるのではないか。亀裂が入った石を砕くのもまた、一滴のしずくにほかならない。
 そう思うと怖かった。


 その怖さが躊躇を生み、出かかった言葉を飲み込ませ、雨になって流れていく。
 伝えたい、届けたいという思いの向こうには、必ずその思いにこたえてほしいという思いもある。一方的に伝えたければ、何も考えずにただ叫べばいい。
 それができるのにしないのは、本当に大切にしたい思いだからだ。


 もどかしさは募る。
 結局は、ひっそりと書く以外にないのだとわかっている。けれど、そうして紡いだ言葉がいつか、誰かの物語と織り重なる日がくるかもしれない。
 不毛なのかどうか、わからない。信じる自分を愚かだと笑うのもまた、自分なのだった。
 祈るように、ただ――。


 雨はまだ、止まない。